ボードをぶつけて穴があいてしまいました。
自分で直すことはできますか?
お気に入りのサーフボードに穴が空いて困っていませんか?
サーフボードって大事に扱っているつもりでも 知らない間に傷ついたり穴が開いたりへこんだりしますよね。
最近人気のソフトボードや 丈夫なエポキシタイプはあまり修理する機会はありませんが 従来の製法で作られたポリエステル樹脂のサーフボードは軽い衝撃を与えただけでも穴が空いたりヒビが入ります。
そして 穴が空いたままにしておくとサーフボードは重くなったりバランスが悪くなったりするのでサーフィンに影響が出てしまいます。
ポリエステルのサーフボードをお使いでしたらリペアキットは持っておいたほうが便利です。
この記事では ポリエステルのサーフボードを自分で修理する方法を解説します。
画像付きのリペア工程なので この記事を読みながら行えばボードリペアが完成します。
そんなに難しくないので 穴や大きなへこみを見つけたらすぐに乾燥させて自分で修理してしまいましょう。
※ ストリンガーやフィンボックスの破損・大きな剥離などは自分でリペアすることが難しくなります。その場合はお近くのサーフショップやリペアショップに修理を依頼しましょう。たいていのショップは他社で購入したサーフボードでも修理可能です。
サーフボードにはどんな素材がある?
サーフボードの芯材となる材料には ポリウレタンフォーム(PU)やポリスチレンフォーム(EPS・XPS)などがあります。
外側を覆っている樹脂にはポリエステルやエポキシといった材料が使われています。
組み合わせを間違えるとフォームが溶けてしまったり硬さが違ってくるので セルフリペアをする前にご自分のサーフボードがどんな素材でできているか確認しておきましょう。
ポリウレタンフォーム(PU)
ポリウレタンはフォームの中では最も重い素材ですが 適度な柔らかさと重さがオールラウンドな波に対応できるため 今でも多くのサーファーに愛用されています。
ポリウレタンサーフボードの構造は 芯材である発泡フォームにガラスクロスを巻いて その上からプラスチック樹脂を流し固めて作られています。
値段も安く修理がしやすいのが特徴です。
デメリットは強度が低いことや 水を吸いやすいことが挙げられます。
ポリスチレンフォーム(EPS/エクスパンデッド・ポリスチレン)
EPSはポリスチレン樹脂を発泡剤で直径約1mmのビーズ状にし そのビーズを発泡スチロールのように圧力と熱で固めた発泡フォームです。
エポキシレジンと組み合わせることで 軽くて丈夫なエポキシボードを作ることができます。
ポリスチレンフォーム(XPS/エクストルーデッド・ポリスチレン)
ポリスチレン樹脂と発泡剤を混ぜて溶かし押出成形した高気密の発泡フォームです。
強度・耐久性ともに高く 長時間水にさらしても吸水しないのが特徴です。
重さはポリウレタンとEPSの中間になります。
ガラスクロス
ガラスを繊維状に引き伸ばしたものをガラス繊維と言い 建築や自動車など様々な分野で利用されています。引っ張り強度と弾性(元に戻ろうとする性質)が高いのが特徴です。
ガラスクロスとはガラス繊維を紡糸した織布です。サーフボードを強化するため フォームにガラスクロスを巻いた上からレジンを流し固めます。
ポリエステルレジン(樹脂)
サーフボードにおいてレジンとは合成樹脂を指し 硬化することでサーフボードの表面をコーティングしています。
ポリエステルレジンはエポキシレジンに比べて強度は低くなりますが 適度な重さと柔軟性のバランスが良く 波に対して反応が良いため多くのサーフボードに使用されています。
硬化時間が短く加工もしやすいので 誰でも簡単にリペアできるのが特徴です。
数分で発熱しながら硬化し 硬化後にサンドペーパーで削ると独特のつーんとした匂いがします。
ポリエステルレジンにはポリスチレンフォームを溶かす性質があるため エポキシボードの修理にポリエステルレジンは使用できません。
エポキシレジン(樹脂)
エポキシはEPSフォーム・XPSフォームのラミネートに使用する樹脂です。
硬化時間は24時間ほどかかります。
丈夫なのでぶつけても割れることはありませんが 硬くなった分しなりを利用した加速が難しくなります。
樹脂は紫外線を当て続けると日焼けをして黄ばみますが エポキシ樹脂はポリエステル樹脂に比べて黄ばみやすくなります。
エポキシ樹脂は硬化剤の分量を正しく配合しないと硬化しません。自分でリペアするのは難しいのでプロに依頼しましょう。
ポリエステルサーフボード用のリペアキットの中身を紹介
サーフボードリペアに欠かせないものは レジン・ガラスクロス・サンドペーパーなどです。
リペアキットには簡単なリペアをするのにちょうどいい量の材料が全て入っています。
単品でも揃えることはできますが 一番安く買い揃えることができるので最初はリペアキットの購入をおすすめします。
DOPES サーフボードリペアキットに含まれる道具
サンドペーパー | 粗目(60・80)細目(120・240) |
マスキングテープ | 修理範囲を囲うための紙テープ |
レジン(ポリエステル) | 樹脂の元になる溶剤 |
硬化剤(パーメック) | 分量をレジンに加えて硬化を促すための液体 |
ガラスクロス | ガラス繊維でできた織布 |
紙コップ | レジンと硬化剤を混ぜるための容器 |
かき混ぜスティック | 割り箸やアイスの棒でも代用できる |
フォーム片 | 修理箇所がフォームまで達している際に使用 |
アセトン | 修復箇所の汚れ除去やハケなどの洗浄に使用 |
リペアテープ | 簡易的にキズに貼るアルミテープ |
他に用意するとよいものは
- ハサミ・カッターナイフ…ガラスクロスや硬化した樹脂を切り取る。
- 腕カバー付きゴム手袋/ポリ手袋…ガラス繊維の粉や樹脂が手に付着するのを防ぐ。
- エプロン…服が汚れないように。
- 防塵マスク…削った粉を吸い込まないようにする。
- ハケ…ホットコートで薄く塗るときに使う。
- パウダーセル(キューセル)…樹脂をペースト状にするための粉末。
- 木の端材…平面をサンドペーパーで削るための当て木。
などです。
⚠︎ ガラスクロスを直接触ると皮膚が数日チクチクすることがあるので ポリ手袋等の着用をおすすめします。⚠︎ 家の中での作業は削った粉塵や細かいガラス繊維が散らばるため後始末が大変です。ガレージや屋外・ベランダなどで行いましょう。
小さなキズのリペア方法を写真付きで実践!
割れた部分の除去
① まずはヒビ・穴・樹脂の浮きなどが無くなるところまでサンドペーパー(60〜80番)で削ります。
サンドペーパーをかけずに樹脂を乗せると剥がれやすくなってしまうので キズより1〜2cm広めに削り ケバ立ちがなくなるように表面を整えます。
⚠︎ ポリウレタンフォームが水を吸っている可能性がある場合 フォームが見えるところまで削り 十分乾燥させて中の水分を蒸発させましょう。
マスキング
② 直したい箇所よりも少し広めにマスキングテープで囲いを作ります。
テープを山折りにして壁を作ると樹脂が流れるのを防ぐことができます。今回は少し大げさに貼ってみました。
レジンの計量
③ クリアレジンの缶を軽く振ってから紙コップに注ぎます。
今回は小さい穴なので10gで十分です。
硬化剤の計量
④ 樹脂を固めるための硬化剤を計ります。(目分量でも大丈夫です。)
この日の室温は23度だったので 10gのレジンに対して0.1gの硬化剤を入れました。
上の写真はサーティワンのスプーンですが 硬化剤の量はこのスプーンで半分弱です。
夏など気温が高いときは早く固まってしまうので硬化剤の量を少なくしてください。
ポリエステル樹脂と硬化剤の比率の目安
温度 | 樹脂の量 | 硬化剤の量 |
---|---|---|
5℃〜10℃ | 100g | 1.5〜2.5cc |
15℃〜20℃ | 100g | 1.0〜1.3cc |
25℃〜30℃ | 100g | 0.5〜0.7cc |
混合
⑤ レジンと硬化剤をよく混ぜます。
多く入れすぎると高温で発熱するので気をつけましょう。
樹脂の塗布
⑥ リペア部分に少量の樹脂を塗ります。
硬化してしまう前に手早く塗っていきましょう。
ガラスクロスを乗せる
⑦ 穴より少し大きく切ったガラスクロスを 塗った樹脂の上に乗せます。
その上からもう一度樹脂を塗り 軽く押さえつけて樹脂とクロスを馴染ませます。
くぼみが深い場合は ガラスクロスを何枚か重ねて穴を埋めてもOKです。
硬化
⑧ 5〜10分ほどで手につかない程度に固まります。
完全に固まる前に 余分な部分をカッターで切っておくと次の作業がラクになります。
一日置いてしっかり乾燥させます。
サンディング
⑨ 完全に乾いたら(60〜80番)のサンドペーパーで面が揃うところまで削っていきます。
平面的な箇所には当て木を使い レールなどの曲面は指で持ってサンドペーパーをかけます。
⑩ 細目(120〜240番)のサンドペーパーで表面を整えます。
ホットコート
⑪ ホットコート(ツヤのあるコーティング)をしていきます。
周囲にマスキングテープを貼り 樹脂に硬化剤を混ぜたものをハケなどで薄く塗ります。
さらに一日乾燥させます。
仕上げ
⑫ 完全に乾いたらマスキングテープを剥がし 細目(120〜240番)のサンドペーパーで当て木をして凹凸がなくなるまで粗いキズが消えるまで削っていきます。
⑭ 仕上げをする場合は 320〜600番(別売)の耐水ペーパーで表面をきれいにして完成です。
小さいキズの応急処置!100均のUVレジンでもリペア可能?
100均で購入したUVレジンでリペア実験
最近ではアクセサリー作りなどの材料として ダイソーやセリアなどの100均でもレジンが売られています。
UVレジン(ソーラーレジン)は紫外線が当たることによって短時間で硬化する特殊アクリレート樹脂です。
テールのヒビが気になったので セリアで購入したUVレジンを使ってリペアしてみました。
テールの樹脂は少し厚めなので デッキやボトムに比べて削るのに少し時間がかかります。
ヒビが無くなるところまで削ってみましたが 幸いフォームにまでは達していなかったので マスキングテープで囲ってレジンのみを流していきます。
容器の口が細くなっているので 隙間にも流しやすくなっています。
太陽光に当てて乾燥させます。10分もしないうちに完全に固まりました。
細目のサンドペーパーで表面を整えて完了です。
試しにUVレジンを雨の日に1時間以上放置してみましたが全く乾きませんでした。なので必ず紫外線のある天気の良い日に使用してください。
時間の経過でどのように変化するかはしばらく様子を見なくてはいけませんが とりあえず密着もしているので一時的にコーティングするには問題なさそうです。
このUVレジンと粗目のサンドペーパー一枚だけでも持っておけば 海で小さな穴が空いてしまったときの応急処置としては使えそうですね。
アルミテープで応急処置する場合の注意点
もっと簡単な応急処置法としては アルミテープ(キッチンテープ)を貼る方法があります。
アルミテープも100均で購入できます。
デッキやボトムなどの平面であればしっかり穴を塞ぐことができますが レールやテールなどの曲面は完全に密閉することは難しいので 少しずつ水が侵入する可能性があります。
水が入ったままにしておくと 変色したり樹脂が剥離してしまうのでアルミテープはあくまで一時的な防水対策と考えてください。
そして 使ったあとは早めに乾燥させ しっかりリペアしておきましょう。
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